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Still Life

残念IT系母ちゃん。旦那さん、娘1歳、猫の4人暮らし。

読書家にあこがれて、「現代読書法」を読んだ

現代読書法 (講談社学術文庫)

現代読書法 (講談社学術文庫)

図書館で借りました。文庫になったのは80年代ですが、なんと昭和16年に出た読書法の本です。
知ったきっかけはこちらのブログ記事。
図書館で語る少年少女のシリーズの一部ですが、本を読みたいと思わせる素敵なお話です。

家庭環境と読書の習慣のこと/図書館となら、できること 読書猿Classic: between / beyond readers

物語中の司書の先生が学生時代に、教授から手渡された本として登場します。

読むことについて初学者が知るべき全てが書いてある。

全くその通りの本だと思いました。
ブログ記事では非常なスパルタ読書法であるように読めてしまいましたが、実際この小さな本には、書物と読書への愛と敬意に溢れている優しい本でした。

「一度読み始めたら、眠りに着くまで本を離してはならない。どこへ行くときも持って行きたまえ。もちろん寝床にもだ。横になったら目が耐えられるまで読み、耐えられなくなったら読んだことを思い出し、眠りに落ちて意識が切れるまで反芻せよ。朝、目覚めたらまず、枕元にあるその本に触れ、ページを開いて読み始めよ。夕べ読んでいたところと頭の中で連結器がつながったら、起き上がって朝の支度を済まし、その後はまた読むことを再開する」
「起きている時間のすべてを読むことに捧げるのですか?」
「寝ている時もだ。たとえ宇宙の運命が変わろうとも、今手にしている一冊に注力し、目を注ぐこの一節を読むのだ。」

ブログ記事の引用ですが、たしかに「現代読書法」にこのくだりはあります。
しかし「読書と時間の利用法」と題された該当の章では、「夜から朝にかけて思考を連続させること」の効率性を説いているのみです。決して精神論で押し通そうとしているわけではない。他の指南の多くも、著者自身の読書に対する愛情を熱く語る一方でとても現実的な内容です。著者が「生活のために仕事に追われる」状況について深い憂慮をしていることが、本全体から感じられます。

読書に寸暇を得んと欲する者は人一倍己が仕事に励む人である。

これから学問しようと志す若い人に向けられた本ではありますが、労働に追われながら、現状から踏み出そうとしている人に、それでも読書は救ってくれると大きなエールを送っている本なのです。

働きながら読書をする

自ら額に汗して得た金で自らの意思によって書籍を求めて読むところに真の読書の味があるのである。

「読書の準備」の章にこんな言葉があります。
「身銭を切ること」を身に着く条件として挙げる読書論はよく目にしますが、著者は苦労して独学しているのでその重みは段違いです。だから「書籍の購入法」の章で「第一に古本屋を利用すること」としていることに、読者への寄り添いを感じます。

そして書籍の選び方として、何度か「いきなり良書を読むこと」を挙げています。
前提として初学から向上すべしとしながら、

準備の中に一生を過してしまうほど愚かなことはない。それ故に一定の準備工作を終えたら躊躇することなく大家の力作に突貫して行くべきである。

と。
そして英語学者である著者がどのような英語の本を読んだかというと

『バイブル』、『天路歴程』、カーライルの『英雄崇拝論』、シェイクスピアの『ハムレット』などが私の最初の英書であった。

なんという飛び級かとしり込みする思いですが、そのような読書を勧める理由づけとして納得したのが「書籍購入法」の章に引用している「エレヴェーター読書法」です。
これは結城哀草果(歌人)が、村の読書会で案出し、勧めた方法です。村で農作業をする若者は小学校を出ただけで、彼らが学校で習うような勉強の仕方では進学した者に追いつかない。そこで「わかるかわからぬなどはよそにして」、高級な良書、一流の書ばかりを読み、そして一定の成果を得たのだそうです。
「書を読みてはなはだ解することを求めず」でも良いのです。
なんだか勇気づけられます。しかし易しくて楽しい本があふれる現代では、わたしはグーテンベルクに挙がっているような古典は読まないまま一生を終えてしまいそうですが。
時代が一挙に下りますが、「読書は1冊のノートにまとめなさい 」では、逆に「難テーマはからめ手で攻める」と称して、入門書や漫画など、攻略できそうな本からとっかかりをつかむよう勧めていました。書籍が豊富な現代だからこそできることです。そして現代に生活しているわたしたちはとても幸せなのです。

読書家あるあるは70年前と変わらない

とても古い本なので、現代に通じる話はなるほどと思うほかにくすっとなることもあります。著者は真面目な文体の中で読書家あるあるともいえるぼやきをぽろっとしていて、それが今読んでもとても面白く感じます。

「書籍の選択」の章では、どんな書物が良いか聞かれて答えたってどうせ読んでくれないんだよね、というぼやきがあったり。
著者の書斎はいつも書籍が積み上がっていて能率的な書斎とは程遠いが、いつかは雑誌に載っていた手法(ライフハックの記事って昔からあるのね)にのっとって改良するんだと展望を語っていたり。
そして極め付けは「本の貸借」の章での「本を貸しても返ってこない」件のぼやき。現代に通じ過ぎ。
なのに同じページに「借りたきりでまだ返さぬものも数冊かあるがこれは近日中に返す積りである」と書いてある。おい。「貸した相手は失念し易いが、書物そのものは決して忘れぬもの。」としてあの本はいずこ、この本は戻って来ぬのかと語るが「そのくせ手元にあればさほどでもないが。」わらう。

本が大好きなくせにあまり読まない、そんなわたしの読書家への憧れをちょっと昇華してくれる、素敵な本でした。
借りた本で自分のものではないから余計そう思うのかもしれませんが、ぜひ手元に置いてまた読みたいと思ってしまいました。しかし手元にあればさほどでもないのかもしれません??

読書!読書!私たちの世界は何とひろいことであろう。