Still Life

残念IT系母ちゃん。旦那さん、娘1歳、猫の4人暮らし。

ホレーショー「一般的な哲学の話なのに俺の狭量な人生観みたいな話にされている件」

英文快読術 (岩波現代文庫)

英文快読術 (岩波現代文庫)

「英文快読術」では中盤から、「正しい読解のための12のヒント」と題して、英文読解での注意点を具体例を通して紹介しています。

たとえば、仮定法の表現。
I should think~で、「~と思うけどね」という控えめな表現になるとか、He may be a doctor.なら医者かもしれないが、母娘の母のほうを指して、You might be her sister.といえば、(姉ではないのは分かっているけど)彼女の姉だとしてもおかしくない(くらい若いね)というお世辞になるとか。

たとえば時制について。
「習慣を表す現在形」というのは中学校で習った覚えがあるけど、実際に長文の中に出てきたらそれとわかるかといえば難しいです。
男女の挨拶から始まる会話文で、男性の「I forget, do we kiss?」というセリフ、これを「キスしようか」と誤訳する場合がありそうだけど、実はこれ習慣を表しているので、「きみとの間柄は、握手するだけか、キスまで進んでいるのか、忘れてしまったのだけど」という意味なのだそうです。男性がモテてる設定だってことがわかってても難しい。ここまでくると文化の違いとして諦めたくなります。

たとえばイディオムについて。
語彙レベル分けされた教材から読むものを選ぶ場合、そのレベルから想像する難易度よりもずっと難しく感じることがありますが、それはイディオムの罠です。イディオムになると全く別の意味となるのに、語彙レベルとしては単語ごとに判定されるからです。

そしてこの章の最初は、「気軽に辞書に手を伸ばそう」ということで、知っていると思い込んで辞書を引かなかったばかりにしでかした誤訳の例をいくつか挙げています。
その一つがホレーショーの哲学。藤村操という昔の学生が自殺したときの遺書に書かれていた言葉で、人生はホレーショーの哲学をもってしてもとうてい解決できないというような内容らしいです。
そもそもホレーショーというのはハムレットに出てくる人物なのですが、べつに哲学者なのではないようです。

There are more things in heaven and earth, Horatio,/Than are dreamt of in your philosophy.
ホレーショー、天と地との間には、いわゆる哲学などでは夢にも考えぬことがあるものだ

藤村学生はこのyourを「きみの」と解釈したばかりに、自殺後100年経っても「英文読解力がなかった」呼ばわりされており、本当にかわいそうです。本書の著者は「当時の辞書には載ってなかっただろう」と同情してますが。

本書でも、webでちょっと検索しても、辞書には

(通常けなして)いわゆる、かの、例の

とあります。

そもそも二人称ではない、一般のyouというのはわたしはいまだに慣れない、違和感いっぱいの用法です。自分なりに「人称代名詞がないと文章が完成しない場合に仕方なく使う」と解釈して納得しているのですが、上記のようなのが出てくるともうオレオレ解釈ではカバーできません。だってyour要らないじゃん。

少し別の話ですが、本書ではYou know, という表現を、たいてい「知っての通り」という意味が入っているものの、時にはむしろそのものずばりの「なんじ知れ」の命令形としても使われるという例があげられていました。そこでは「実はですね」と訳されていて、なるほどと思いました。

翻ってyourホレーショー。you know=なんじ知れにならい、むしろ二人称で「『あんたがいつも言ってる』『お前さんお得意の』哲学」という解釈が成り立ち、それをこなれた日本語にすると「いわゆる」になるのではと思い、納得しかかりました。
しかしちょっと検索しただけで、そういう限定のしかたは間違っているとわかる例文が出てきます。

I hate your crafty politicians.
ずる賢い政治家は嫌いだ.

だからyour要らないんじゃないのかと。お手上げなんだけど、それでは命をかけてまで我々にyourの多様性を訴えた(訴えてないけど)藤村学生が浮かばれない。なのでわたしはまた英語の本に挑戦するのです。
またそのうち、気が向いたらね。

英文を読んで、おなかをかかえて笑ったり、目からポロポロ涙したりできるようになれば、しめたもの。英文快読術を完全に身につけた何よりの証拠なのだから。

こんな風になれたら読書が倍楽しくなりそう。
しかしこの本は最終章の実践編に取り掛かることはできないまま返却しました。実践編は4つの短編がたっぷりの解説と翻訳つきで読めるのですが、ここまで読んできてわたしにはとても難しいだろうと思ったからです。

もし自分の本だったら最後まで読まずにいることに短期間であってもストレスに感じるだろうに、図書館で借りると返却期限があることを言い訳に出来て良いですw


Audible無料期間にこんな本を聴きました。

「赤毛のアン」で英語づけ

「赤毛のアン」で英語づけ

著者の茂木健一郎は繰り返し、名作を原書で楽しむことの素晴らしさを書いていて、聴いているこちらもなんだか赤毛のアンの世界が大好きな気分になってきました。この本では、とにかく読み通すことを重要視していて、日本語訳も参考程度としていました。

「英文快読術」のように、正しい文法と単語の知識を使って正しく解釈することが大切なのはもっともですが、わたしの集中力のなさ、やり抜く力のなさを考慮に入れると、やはり辞書はあとまわしにして、とにかく読み通して楽しむことをつい優先してしまいたくなるのでした。