Still Life

生活の記録。

2つのオー・ヘンリー

疑問

明らかに英語学習者向けの書籍の場合、retold版でもretold表記はされないのでしょうか。しなくても良いものなのでしょうか。それって学習者を混乱させませんか?知らなかったのわたしだけ??

具体的には、オー・ヘンリーの「After Twenty Years」を2種類見つけています。簡単なほうと難しいほうです。難しいほうは手元にあり、南雲堂の対訳本です。簡単なほうは本屋で見ただけです。何冊か見ましたが、本屋で見た限り、retold版であるようなことは表紙には記載されてなかったと思います。でもあれはretold版でしょう。それにしてもどれも全て日本で出版された学習者向けです。表紙を見ただけでは原文なのかretold版なのかわからないのです。

"after twenty years original text"と検索して、1番目と6番目に出てきたテキストが、難しいほう、簡単なほう、そのままでした。ネットでも両方出てくるのか。

おそらく原作。南雲堂の対訳本と同一。
americanliterature.com
簡単なほう。本屋で見たのとおそらく同一。
https://americanenglish.state.gov/files/ae/resource_files/after-twenty-years.pdf

うだうだ

「After Twenty Years」はとても短いですが、すごく面白いと思います。夜のニューヨークの街に寒い風雨が吹きつけ、足早に過ぎるまばらな人通りなどが難しい単語(主観)で描写されます。でも繰り返し読むと、無駄な描写が1つもないことがわかってきます。
わたしはたまたま難しいほうの「After Twenty Years」を読んで、難しいながらさすがはと思っていました。そのあと簡単なほうのをざっと立ち読みした限り、だいぶ描写が端折られていると感じたのです。

例えば、西部から来た男の描写。彼は最初は火の消えた煙草をくわえており、警官と話をしている途中で火をつけたので、そこで初めて顔が仔細に描写されるわけです。男の方は警官の顔は確認できていないはずだということも想像できます。
話のオチを知っている方なら、その設定の細かさがぜひ必要であることが分かると思います。簡単なほうにはそれがありません。
西部の男がネクタイピンに嵌めているダイヤモンド。これはぜひoddly setされていなければなりません。オチまで読み、そしてこの描写を思い出すことで、なんだか悲しくなるのです。悪銭身につかずとはよく言ったものです。でも簡単なほうにはこれも抜けています。

わたしはなにもretold版をディスるつもりはありません。「英文快読術」にも書いてあったように、その多くは原文の良さを全く損なわずに読みやすくしてくれているものでしょう。しかし、それにしても。
たまたま簡単なほうを手に取り、それに特にretoldと書かれていなければ、わたしはオー・ヘンリーの原文を読破したのだと信じるでしょう。それって難しいほうの文の存在を予想することすらできないじゃないですか。一生にわたって損する可能性があります。読者には開示してほしい情報です。

と、ここまで書いて、でもたとえば赤毛のアン。本屋に並んでいる英語学習者向けの本は必ず抄本であることは明らかです。だってまず分量が少なすぎますもん。でも記憶の限りでは、あれらも全てretold by ...といった表記はなかったと思います。やっぱり原文ではないことが当然だと思うべきなのか。短編でもそうだなんてつらいなあ。対訳が欲しいけど原文が読みたい、そんなわがままを気軽に叶えるためには、もう南雲堂の本を買うしかないのかな。

対訳オ―・ヘンリ― (現代作家シリーズ)

対訳オ―・ヘンリ― (現代作家シリーズ)