今年に入ってから6月に入るまでずっと毎日、朝夜の通勤時に3DSの「どうぶつの森」をやっていました。
6月から出向先が変わったのですが、また本を読みたくなって、だいぶ前にKindleで買っていた「月は無慈悲な夜の女王」を読み始めました。たぶん100円で買ったんだと思う。ずっと読んでみたいなーって本がセールしているとラッキー。

- 作者: ロバート・A.ハインライン,牧眞司,Robert A. Heinlein,矢野徹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/03/15
- メディア: 文庫
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またもや意外と長かったようで読了まで2週間かかりました。あとから知ったのですが、あの「夏への扉」を書いた人と同じなんですね。翻訳が古くて意味不明な部分すらあるのに、どおりでストーリー的には入りやすいわけです。
地球の流刑地だった月が、地球に対して独立する革命の話。主人公はもともと計算機技術者(!)のマニーだけど、この革命に欠かせないブレインとなるのが、マニーの恩師と、マニーによって人格を見いだされた計算機、マイクロフト。
最初はぎこちないぶっきらぼうな計算機だったマイクが、どんどん人格を獲得し、ついにCG合成でテレビ放送し、革命の主導者「アダム」という人格を操るまでになるのだけど、ずっとマニーの親友でも居続けます。マニーもまた、月世界の大統領にまで昇りつめるけれども、あくまで技術者で居続けるのがたまらなく良いです。技術者であることに誇りを持ち続けるって素晴らしいな。
この小説を通して感じたのは「壮大な革命のシミュレーションだな」ということ。革命組織を広げていくにはどうしたらいいか。必要な仲間や設備、それに資金を得るにはどうしたらいいのか。そんなことを教授の思慮やマイクの計算で淡々と進めていき、さらにはマイクも思いつかなかったような可能性をマニーが提案することも。そんなものが、特に大きくひっくり返すこともなく、どんどん革命成功まで導かれていきます。
そんな「特にどんでん返しもないシミュレーション小説」にいつも好感が持てるかというとそうでもなく、「南極点のピアピア動画」を読んだときは、ニコ動ヲタクの都合のいい妄想を聴かされている感があったので、大きな裏切りや謎解きがなくても面白かったと思わせる物語はやはりすごいんだと思います。
「夏への扉」では、猫のピートがすごくかわいくて、これは絶対猫好きでないと描けないかわいさだと思うのですが、今回そんな愛らしいキャラは、性能を持て余し、友達を欲しがり、ジョークに興味を持った計算機「マイク」です。ランプを明滅させて笑いを表現するとか、初期のマイクはほんとにかわいい。こましゃくれた小さな男の子です。そのうちマニー自身がマイクが計算機であることを忘れるくらいに人間らしさを獲得していき、最後の大事なときには、マイクは「話はできないけど、そばにいてほしい」とマニーに言って、ずっと電話を通信状態にしておいたり。
こんなすごいコンピュータが月にでーんと設置されて、あらゆる制御をしているのなら、地球にはそれ以上のコンピュータがあるはずで、こんなにマイクに頼ってたら絶対手痛いどんでん返しがあるに違いないと思っていたけど、結局そんなライバルコンピュータは登場せず、でも最後には独立した月世界になる代償としてマイクが沈黙してしまう。マイクだけがこんなに特別に、そして限定的にすごかったのです。マイクだけが特別なコンピュータであるために、最後の沈黙が必要だったと思うと切ないのです。
なんかまとまりませんが、この小説は、こんな「ぐっとくる」ポイントがちりばめられています。
さてこれでだいぶSFに耐性がついてきた気がします。さあ次はどんなSFにチャレンジしようかな。