わたしは基本的に悩まない性格です。
悩んでも仕方ないことはあまり考えもしないし、期限付きで選択する必要があることは悩まず決めてしまいます。それで後悔したことはあまりないので、悩むだけ無駄なのです。
そんなわたしが、何年ぶりかわからないくらい久しぶりに悩みました。たった3週間ほどですが。
それは、無痛分娩を予約するかどうかです。
もともと、妊娠が分かったばかりで知識が今以上になかった時から、絶対無痛分娩にしようと決めていました。もちろんお産をする病院を選ぶときは真っ先に無痛分娩を行っている所を条件にしました。その結果良い病院が見つかり、麻酔もできる先生に毎回診ていただいています。これで出産の痛みに恐れることもなく赤ちゃんの成長と誕生を楽しみにしていれば良いんだと思いました。
この病院では無痛分娩を希望する場合、まずは先生から無痛分娩についての説明を受けます。そして安定期に入った頃に先生と予定を合わせ、計画出産の予約をします。
まだ産院の検討している時点からこの流れは説明を受けており、この時は計画出産ということにもとくに違和感を感じずにそういうものだと受け取っていました。
ところが、12週を過ぎた頃に詳細な説明を受けると、迷いが生じてしまいました。
無痛分娩そのものには、説明を受けたあとでも迷いも不安もありませんでした。麻酔というものがいかに丁寧に厳密に管理されているか、小さい時から何度か麻酔手術を受けたことのあるわたしは実感していたし、信頼もしています。麻酔について間違いが起こるとしたら、それはもう運命と受け取れるくらいです。
むしろ最初はスルーしていた条件、計画分娩というものに思わぬ抵抗感が芽生えてしまったのです。
説明によると、予定日である40週よりも1週間ほど前に予定を決め、陣痛促進剤を使用して無痛分娩に移ります。初産では出産が予定日よりも遅くなることが多いことを読んだ後だったので、1週間前は早すぎるのでは?と思ったのが最初の引っかかりでした。この引っかかりを払しょくするため、サイトを見て回ったり何冊か本を買って読んだりしました。
無痛分娩についてはいちばん参考になるのが、こちらのサイトのQAです。www.jsoap.com
次に読んだのはこちらの本です。

痛くないお産麻酔分娩がよ~くわかる本―周産期専門の麻酔科医に聞く
- 作者: 奥富俊之,島田信宏
- 出版社/メーカー: メディカ出版
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (3件) を見る

- 作者: 勝間和代のクロストーク,瀧波 ユカリ
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2015/04/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る

- 作者: ハイディマーコフ,サンディハザウェイ,アーリーンアイゼンバーグ,竹内正人,森田由美
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2004/10/15
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 91回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
お産はどれくらい痛いのか
「痛くないお産 麻酔分娩がよーくわかる本」より。
陣痛の平均的な痛みの程度は、手指を切られたときの痛みや癌による痛み(癌性疼痛)と同じくらいだといわれています。
といいつつ手指の切断よりは少し下に矢印がついていますが。
よく「男性には耐えられない」とか、「鼻の穴からスイカが」とか荒唐無稽な事が言われますが、なるほど手指の切断なら現実にありそうな痛さです。そして、カウザルギーよりも下なのだし、耐えられない痛みではないと言われるのも納得はできます。制裁や贖罪を理由に指を詰めてる人がいる(個人的には知らないけど)ことから、痛みを乗り越えることに意義のある状況もありえるでしょう。
でもわたしなら麻酔をお願いしたいです。
で、そのお産の痛みがどれくらい続くのかというと、普通のお産でもだいたい10数時間だそうです。そしてその長い時間、部分麻酔を効かせるには、背中からカテーテルを入れる硬膜外麻酔以外方法はないそうです。そして担当の先生によれば、この麻酔をすれば、通常感じる痛みが10だとすれば、0か1程度になるそうです。
わたしなら麻酔をお願いしたいです!
無痛分娩のリスク
硬膜外麻酔そのもののリスクについては、この本以外にも読んだ2冊にも、だいたい同じ内容が挙がっていて、齟齬はありませんでした。特に、麻酔のせいで帝王切開になってしまう可能性はないという意見が強くて安心しました。痛いのが嫌なのにおなかを切る羽目になったら本末転倒ですから。
これまで、硬膜外麻酔はお産の進行を遅らせたり止めたりすることがあるので、帝王切開や鉗子分娩、吸引分娩などの外科的処置に至る可能性を高くするといわれてきました。しかし最近の研究によると、必ずしもそうではないことがわかっています。
「すべてがわかる妊娠と出産の本」
過去の研究を分析した結果、普通分娩と比べて、帝王切開となる率が高くはならないという結果でおおむね意見がまとまっています。
「無痛分娩のすすめ」
無痛分娩≠計画分娩
ところが、計画分娩となると調子が変わってきます。
計画出産については気を付けなければならないことがあります。初産の場合は陣痛を誘発すると、いわゆる難産で帝王切開になる可能性が高まります。・・・経産婦はほぼ問題ないとされていますが、初産婦は医学的な理由がない限り計画出産は避けるべきです。
「無痛分娩のすすめ」
無痛分娩が普及している海外でも陣痛は自然に来るのを待つそうです。
この一説を読んで、すっかり驚いてしまったので、「すべてがわかる妊娠と出産の本」を引っ張りだして、「計画的な陣痛誘発」の項目を読みました。
(医師や患者が計画出産を選択する)こうした事情はしばしば切実であるとはいえ、誘発に伴うリスク(たとえ小さくても)よりも重んじるべきではないでしょう。実際、こうした風潮に強く反対する米国産科婦人科学会では、少なくとも39週以前はできるかぎり陣痛誘発を行わないこと、メリットがリスクを上回る場合にだけ実施すること、とのガイドラインを発表しています。
「すべてがわかる妊娠と出産の本」
無痛分娩をすすめる記載ばかり読んでいたようです。改めて無痛分娩の項を読み直すと、「無痛分娩の予約をするのは行き過ぎだ」という記載がありました。
無痛分娩はいいけど計画出産はダメ
わたしの中では計画出産はぜひとも避けておきたいという結論に達しつつあります。
24時間対応ができない産院では、対応できないタイミングで陣痛が来たら、もうあきらめるしかありません。わたしの産院では先着で予約するほどなので、「対応できるタイミングで陣痛が来たら無痛にしてもらう」なんて選択肢もかなり絶望的なのではと思ってしまいます。
すでに産院を決定し、予約金まで支払ってしまった上12週を過ぎていたわたしはもう今更産院を変えるわけにはいかなかったのですが、選んでいる時点でこのことを知っていたら、選び方はだいぶ変わっていたと思います。あるいは、最初から無痛はあきらめていたかも。

- 作者: 西村・プぺ・カリン,石田みゆ
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2015/07/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
(無痛分娩ができる産院を探したところ、)東京都内で見つかったのはたったの20個所ほど。さらに24時間、週7日、年中無休体制の産院という条件を加えると、数はぐっと絞られ、たった2つか3つの病院しか残らなかった。
日本の首都でこの調子なら、ほかの地方は絶望的だろうと思います。
更に、先に紹介した日本産科麻酔学会が公開している無痛分娩施行施設の一覧でも、「無痛分娩のすすめ」の巻末に掲載されている施設リストでも、その施設が24時間対応かどうかはわからないようになっています。
これでは、わたしのように、初産の計画出産のリスクについて考慮しないまま施設を選んでしまう人は後を絶たず、更に計画出産でのリスクと無痛分娩でのそれとを混同してしまうような人が、専門家の間でも減らないのではと思ってしまいます。
できれば多くの産院で24時間対応の無痛分娩を実施して欲しいのはもちろんですが、まずは、本当にまず最初の一歩としては、もっと現状の状況を細かに提供して欲しいなあと思います。このようなリストに、患者の希望での無痛分娩ができるのか、そして24時間対応なのかという情報は必須なのではないでしょうか。
再び担当の先生に聞きに行く
次の検診は15週を過ぎた時でした。
本で読んで、初産での計画出産のリスクが気になっている話を先生にしました。わたしの拙い説明でもきちんと聞いてくれた先生は、まずリスクは同じデータを見ても解釈により違うことを話してくださり、さらに、全く促進剤を使わないお産のほうがむしろ少ないこと、特に41週を過ぎてしまった場合など、自然な陣痛を待ったほうがリスクになることなどを話してくださいました。
そもそも、39週過ぎと40週とで、たった5日ほどの間に大きな違いはないよと笑いながらおっしゃったのには、そうだよなあと納得し、でも40週を過ぎたかどうかは気分的に大きいし、と再び悩みはじめてしまいました。
そんな様子を見て先生は、「そのような心配をするのなら、和痛が良いのでは」と提案してくださいました。
和痛というと呼吸法しか知らなかったのですが、こちらでは鎮痛剤を使うとのこと。
そして、無痛分娩の申し込みはあくまで計画出産についての申し込みなので、分娩時に希望すれば、そして条件が整っていれば無痛分娩にもできるとのことです。(ただし無痛を約束することはできないと念を押されましたが)
結論
結果、タイトルにも書いた通り、無痛分娩の申し込みをしない決意をしたのです。
まずは自然な陣痛を待ち、もしお産のときに条件が恵まれていれば、無痛分娩をお願いします。麻酔が無理でも鎮痛剤による和痛分娩をお願いします。予定日を大きく過ぎるなどして、医療的に必要と判断されれば、促進剤を使用した分娩でも帝王切開でもお願いするのは当然として。
お産の痛みへの怖さが新たに加わってしまったのですが、それでもよく考え、先生にも相談して納得して決めたことなので、今のところはすっきり晴れやかな気分です。
きっとそうなんですよね。
余談
ところで、無痛分娩についてサイトを見て回っていた時に、ちょっとびっくりするような記事を見かけました。doctorsfile.jp
営業的には「無痛分娩は楽ですよ、安心ですよ」ということになるのですが、僕は本音ではあまり力を入れたくないんですよ(笑)。本当は「産みの苦しみを知りなさい、その苦しみを愛に変えなさい」と言いたいんですよね。でもやっぱりお産の苦痛を怖がる患者さんは多くいて。以前、流行したラマーズ法のような和痛分娩は自然分娩に近い状態ですが、無痛分娩は計画出産となり37~38週で陣痛を起こして産まなくてはいけません。長く待っていると痛みを止める前に陣痛が始まり自然分娩になってしまいますし、逆に、34~37週3日までは後期早産と言われていて肺呼吸がうまくいかず、赤ちゃんのQOLを脅かす結果になることがあります。いずれにせよ、それぞれに良い点もリスクもありますから、すべてご説明して患者さんに選んでいただくようにしています。現在当院では分娩数の1/3が無痛分娩となっています。
産みの苦しみを推奨しているという点がまずヒキポイントです。
無痛分娩についての説明で、必ず導入に用いられる常套句「産みの苦しみを乗り越えてこそ云々」を本当に言う人なんていないと思っていましたが、実在するんですね。しかも産科の理事長とかギャグでしょうか。経営している病院の1/3の患者に15万円も請求して無痛分娩を施している人が言うことですかね。ちなみにこのインタビューでは締めの言葉にもう一度同じことを言っていて寒々とします。このじいさんの指を切断してください。
それから、無痛分娩=計画出産と当たり前に言っているのもヒキます。ずいぶんすっとばしてはいけない内容をすっとばしています。そのリスクはここの病院でのリスクだと本当に説明しているのでしょうか。