Still Life

生活の記録。

男前料理道を邁進せよ!「聡明な女は料理がうまい」を読んだ

レシピノートを飾る言葉を探したい

昨年末産休に入って以来、産後1カ月を除いて比較的料理習慣が身についてきています。
とはいっても当社比というだけ。朝はレトルトやシリアル、昼はほぼパスタに出来合いのソースなので、夜しかまともに料理しておらず、しかも毎回1時間ほどかかってしまうトロさです。
必ず夕飯の支度に1時間かかるなんて、来年仕事に復帰したらとてもそんな悠長なことはできないと思うので、もっと効率的な方向にスキルを磨かないといけないのですが。
仕事でもそうですが、わたしは本当に効率化が苦手です。


しかし手書きのレシピノートなんか作ったりして、楽しむ方向には持っていけていると思います。
かつてよく使っていたモレスキンの小さなノートが、まだ1冊余っていたので、それを使っています。見開き2ページに1つで1レシピ。作りたいレシピを本やサイトから写し、作るときはノートを参照。そして作ったら感想を書き込んでいます。
そんなノートの扉には、料理モチベーションをあげるために、アプリケ作家宮脇綾子さんの言葉を書いています。
oshiete.goo.ne.jp
ちなみにこの質問者はわたしです。

内容としては良いと思うのですが、引用するにはちょっと長いし、文章としてもあまり調子の整った感じではないと思うので、何か別の素敵な文章を扉に飾りたくなりました。

そこで思いついたのが、桐島洋子さんの料理エッセイです。

聡明な女は料理がうまい

聡明な女は料理がうまい

20年近く前に文庫で読んだのですが、内容はすっかり忘れてしまいました。
今回Amazonで探したら、単行本で再販されていることを知り、電子書籍ではないけどぽちりました。

素晴らしいけど厳しすぎる文章

文章はさすがに素晴らしいです。スパッとした物言いの中にちょっぴりしんみりさせるものがあり、あー素敵な人なんだろうなとは思います。
とはいえ特にプロローグや、食材事情、物価高についてふれるあたりなどは時代を感じます。
いまやかなりの世帯が二馬力でないとそもそも生活が成り立たないわけですが、40年前って一部のスーパーウーマンががむしゃらに頑張る時代だったのでしょうか。

男は女にできる仕事ができないのに、女は男の仕事をどんどんモノにしつつある。無能な男に女が追いつくのではなく、有能な"両性具有"の女に男が追いついての男女平等こそが望ましいのだ。

と厳しいことを言う。言い切った直後に

正直言って私もしばしばへとへとになり、男のように奥さんを持ちたくなる。この分業社会で仕事と家庭を両立させるのは、口で言うほど簡単なことではない。しかし、そういう社会のしくみのほうがまちがっているのだから、屈服するわけにはいかないのである。断固強がって、人の二倍も三倍もがんばるくらいの心意気がなければ、とても社会を変えていくことはできないだろう。

なんて驚きの本音が漏れる。桐島氏ほどのはちゃめちゃな人がこんなに強がらないといけないのなら、当時のウーマンリブはそれはもう大変な戦いだったんだろうと思います。厳しいです。スーパーウーマンでなくても働かないといけない現代で同じことを言ったらマッチョ過ぎると非難轟轟でしょう。非難轟轟といえば、オードブルの章の導入に、大島渚が「昔のクラスメイトの家で飲むと出てくるつまみがハムやチーズなんかで貧しいなあ」って言ったなどと紹介されてて、これ今言ったら速攻で燃えるわって思いました。桐島氏は同意するわけですが、その理由は「オードブルとしてはけっこうだけど、月並みすぎる」という全然別方向での同意であるうえ、月並みではないオードブルの例として納豆や大根おろしを出してくるのでもうこれは本当に俳句かなにかの世界だなと許せてしまいました。

それにしても不思議と最初に読んだ頃は違和感を感じませんでした。学生だったから、女性の社会進出とか全く実感してなかったのかな。

「人を暖める女になりたい」

最高に穏やかにしんみりとしている個所はこれです。
子供の頃新聞で読んだという岡本かの子の鍋料理のエッセイを引用し、私も愛情こもった鍋料理で人を暖める女になりたいと綴ります。

私が書いている料理も、ほとんどはおそらくだれでも知っているようなものばかりで、事あらためて作り方など書くのは気が引けるのだが、たいせつなことは何よりも作る心にあるのだから、その"作る心"をいささかでも励ますためと思って、悪びれずに書き続けることにする。

高い肉、硬い肉、わずかな肉をどう料理するか、それこそスペアリブにかぶりつく勢いで豪快に語ったあと、魚は常識路線でも日本がいちばんとストンと落ち着き、戦中のいわし料理の懐かしい思い出を語りだしてしんみりしてきたと思ったら、こんな告白でこの章が終わるのです。全く油断できません。まさにわたしは"作る心"を励まして欲しくてこの本を手に取ったのだから。

料理入門はわりと有用

さあこれから料理を始めようと思っている人にはとても面白く励みになる入門方法を指南してくれています。
料理をしたことがなかった友人のドクターに、以下のアドバイスを施して、見事ロートレックのレシピを再現させてしまいました。

  • 最初に作る料理は志を高くして難しいものに挑戦する(でも志はほどほどに)
  • 普段からたくさんのレシピを読んでおく(忘れてしまっても構わない)
  • レパートリーノートを作る(でも作者はやってないw)

大成功のお披露目を終えたあと、「辞書を座右に置くように、料理の基礎の本を台所に備えておき、わからないときにそのつどのぞけばいい。とにかくシャニムニ料理を作っているうちに、次第に基礎が身に着く」とアドバイスをしています。

わたし個人的には、今英語の勉強をしたい気分が高まってきている(溜めているところ)ので、英語のレシピを読むのはぜひやってみたいと思いました。ためしに検索してみると、Kindle端末で無料で読めるのがいっぱいあるのを確認しました。ただ、いくつか覗いたレシピは全部文字ばかりで出来上がりが想像出来ないものでした。写真がいっぱいついているのを探してめくってみようと思います。

次に理想の台所について語っています。台所道具をそろえるにあたって、今流行りの「持たない暮らし」に通じることを書いています。日本の台所は引き出物や景品があふれているしカラフルすぎると嘆いた上で、系統立てた買い物をすること、料理を引き立てるために簡素な台所にすること、テーマカラーを決めること、そして「モノを持つより持たないことに努めるべき」としています。

たしかに、70年代の台所用品って、プラスチックのものが幅を利かせ始めた上に、なぜかカラフルな花柄模様があしらわれていましたね。現代はシンプルなものは増えて統一感は出しやすくなったとは思いますが、油断するとシリコン製の派手な色のモノが増えてしまいそうです。気を付けなければ。

しかしこういったものを揃えましょうとリストアップしたものはかなりの大所帯と感じてしまいました。これから料理をはじめようという人が、本当に鍋を4種類も要るのでしょうか。わたしはこの点持たないことに努力済み?のようで、お鍋は2つ、フライパンは1つしか持っていないし、消耗品として挙げている竹串だのワックスペーパーだの使ったこともありません。なによりオーブンが必須と書いていることに驚きました。でもきっと英語のレシピを読んでいれば、オーブンを使う料理も多いことでしょう。うちはオーブンレンジなのにオーブン機能を使ったことがありません。

料理の合理化を説いていて、食品冷凍のすばらしさを力説していますが(「淋しいアメリカ人 (文春文庫)」で予言していたことを思い出した)、そのわりに包丁はあえて錆びるものを使っていつも研ぐこととか、鉄製のフライパンを手入れするとか、だしの素はわびしいと言ったりと、わたしが考える合理化よりはちょっと手間暇かかってるなあと思ってしまいます。
学生の頃読んだときは、これに倣って鉄製のフライパンで頑張ってみましたが、数年で錆が出てしまいました。今のわたしは堂々とステンレス包丁にアルミのフライパンだし、だしの素必須だし、もちろんごはんや青菜は即座に冷凍します。

参考にしたいレシピはまだあまりない

さて本の後半は食材ごと、国や季節ごとのエッセイとともにレシピを紹介しているのですが、わたしの料理レベルがまだ至らないのか、作ってみたいと思うようなレシピにはなかなか出会えませんでした。

レシピノートに書き写をうと思ったのは、基本のフレンチドレッシングと、ドレッシングのバリエーションの素材アイデアです。「レディメイドのドレッシングを買ってくるなんて無精でばかげたことだ。これこそ最も自分自身で作るべきものだ」の言葉とともに、次から次へと素材のアイデアを出しているのです。これには大いに刺激されました。というのも、最近「きょうの料理ビギナーズ」で特集されていたソースをレシピ通りに作り、けっこうおいしいしバリエーションも豊かになることを実感したからです。今までは何も考えずにドレッシングを買っていましたが、これからはぜひ手作りしたいです。そして「一期一会」もいいけれど、できれば記録して、これがウチの味ってのを作りたい。ぬか漬けとかは無理でも、ドレッシングならそれができそうな気がします。

それからフローズンクッキーのレシピ。以前読んだときにフローズンクッキーのことはよく覚えていて、これだけは絶対レシピを控えようと思ったので、見逃しませんでしたが、まだ実際に作ってみるかはわかりません。子どもにおやつが必要になったら、手作りしてやりたいので挑戦するかもしれません。このフローズンクッキー、文庫で読んだときはイラスト入りで紹介していたと思うんですが、イラストはありませんでした。別の本と勘違いしていたのかも?

その他雑多な感想

  • ミクシングパーティーって合コンじゃん
  • タラモサラダってギリシャ料理だったのか!
  • ラクレット食べたい

わたしのレシピノート、改訂案

著者も実行していなかったレシピノート、これからも続けようと決意を新たにしました。こんなことを考えています。

  • 表紙にロートレックの黒猫のポスター絵を貼る
  • 扉に飾る言葉は見つからず。。
  • 表紙裏に「民族資本の七つ道具(みそ、しょうゆ、しょうが、にんにく、ごま、みりん、とうがらし」を書く
  • そして次のページにドレッシングの研究専用ページを作る