オーディオブックを聴きながら料理や洗い物をしています。
最初は無料お試しのAudible、FeBeに乗り換えてから最初の1冊は児童文学の「冒険者たち」、そして2冊目は、よく本屋で見かける「嫌われる勇気」を聴きました。
たわしさんが紹介している通り、対話がちゃんと別々の朗読者なのでとても聞きやすいです。
ちなみに「冒険者たち」のたくさんの登場人物を一人で演じ分ける声優さんもすごいです。もちろんこちらは物語形式なので一人が朗読してくれるほうが聞きやすいのです。「源氏物語」で時々別の声優さんがセリフだけ言うのは、速度を上げていると特に聞きづらかったです。
家事をしながらオーディオブックを聴いただけだと、振り返るのがすごく難しいです。なのでこの読書感想文も、一度聞いただけの内容を思い出しながら書いているので、わたしのほかの読書記事以上に不正確であることを念のためお断りしておきます。
本の内容は、ある哲学者が「誰でも幸福になれる」と主張しており、それを聞きつけた青年が道場破りに行くというお話。青年のぶしつけな反論にも、哲学者は終始穏やかに語ります。
青年「ええい、あなたはサディストだ、悪魔のような方だ」
哲学者「ははは、あなたは面白いボキャブラリをお持ちですね」
こんな感じで手玉に取られて、毎回言いくるめられてしまいます。再び怒りを温めて訪れる青年。しかしまたもや言いくるめられの繰り返しです。
そしてついには哲学者に「あなたは大事な友達だ」と言われ、めちゃくちゃ動揺する青年。
なにこのツンデレ喜劇。
腐属性がほんの少しあるわたしは図らずもときめいてしまいました。にしても友達宣言のあと急激に青年が懐柔されてしまう様子はちょっとちょろ過ぎです。
本の前半では傾倒しかかった
このようにアドラー心理学の入門をわかりやすく教えてくれる本書、喜劇部分は置いておくとしても、わたしは前半くらいいまでは、すごく引き込まれて「アドラーやばい・・・」って思ってしまっていました。なんだかわたしが普段なんとなく思っていることと重なるのです。
- 自分の今のライフスタイルは自分が選んできたもの(マッチョだなあとは思いますが)
- 課題を分離し、他人の課題に首を突っ込むな
- 人が生きる意味は存在しない(これは後半ですが)
(うーん、もっとあったと思うんだけど忘れてしまった・・・)
そして極め付けは、哲学者は「自分が好きかと聞かれて、好きだと答えられる人はなかなかいない」と言っていますが、わたしこれ「自分大好き」なんですw なんとなく思っているどころか、既にけっこう実践できているのか!?
たしか本の中でも触れられていたと思いますが、昔からある自己啓発書は、アドラー心理学を取り入れているそうです。「7つの習慣」を一読したことがありますが、「自立した個人であろう」というような主張が、アドラー心理学に共通するのかもと思いました。
これらの、「わたしの思ってることと同じだ」感は、実は斜に構えて読んでいたつもりの自己啓発書を知らないうちに自分に取り込んでいた結果なのかもしれません・・・?
解決していない問題がある
気になるのが怒りの種類の問題です。
「アドラー心理学では私憤と公憤(たぶんこの字が当たるんだと思う)を明確に分けている」と言っていますが、境界線をどうやって引くのでしょうか。そして私憤はコントロールできると説くわけですが、なら公憤はどうすれば良いのかは全く語っていません。
青年が図書館司書という設定なので、「給与の安い非正規雇用が大半と話題になったなあ」と思うと、青年の自己嫌悪すら社会問題に取り込めてしまえるかもしれません。
一方で、哲学を語るために哲学者宅に訪問する時間的心理的余裕が羨ましいと思うIT産業従事者の労働環境については社会問題にしてもいいでしょうか??
・・・と、悩みたくないわたしなら何でも公憤に振り分けて悩み自体を放棄してしまいがちですが、本書ではかなり私憤寄りに倒して解決していこうとするふしを感じました。
これって、「日常に侵入する自己啓発」で指摘されていた自己啓発書の問題点:「何でもかんでも自分で解決できるとあおりながら、一方で手に負えないような問題は、あっさりと目をつぶる」の原点(あるいは誤解されている点)なのかもしれません。
わかりやすい未解決問題としてもうひとつは協同体の話です。
共同体の中に宇宙だの過去や未来だのも含まれるようで、それを聞かされた青年は「わけがわからない」「まるで新興宗教」とまで言うし、この怪しさについてはもうすこしすっきりさせてほしいと思うのですが、これ以上触れないまま、怪しさ全開の理屈が展開されてこの本が終わってしまいます。
いわく、「共同体の中で人の役に立とうと努め、過去も未来も気にせず今現在に生きれば、たちどころに幸せになる」というものです。
オーディオブックで一度聞いただけのわたしのこの本の結論はこれでした。
おい青年ここにこそ突っ込めよと思うのですが、哲学者に友達と宣言されてからこっち、最初の勢いは全くなく、もう哲学者にひざまずいて教えを乞うている姿勢なのです。
青年「わたしにも・・・できるのでしょうか・・・?」(目を輝かせる擬音が聞こえてきそう)
現在に集中せよというたとえで、スポットライトが登場します。現在に強烈にスポットライトが当たっていれば過去にも未来にもとらわれないはず。うすらぼんやりとした光しか当てていないから周囲が見えてしまうのだということですが、普通に目くらましをうけています。お疲れ様でした。
前半でおおおっと期待したわたしはすごくがっかりしてしまいました。
しかしこの本は対話形式の入門書。きちんと他の本も読めばもっとすっきりするのかも・・・?と思っていますが、そういうのが自己啓発書マニアへの第一歩なのかもしれません。恐ろしい恐ろしい。
「課題の分離」についてはうなずけるので、参考にしたい
自分の考えに近いとして挙げた「課題の分離」、これはたとえ相手が子供でも、相手の問題に口を挟むのは控えるべきだとしています。
普段の生活から進路選択に至るまで、子の課題だからと指図するのを控え、アドバイスにとどめるというのはとても難しいことのように思います。しかしそれができれば、すごい理想的な親子像である気がします。
対人関係を築くのが苦手なわたしなので、娘と良い親子関係を築くべく、心に留めておきたいと思います。