
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
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- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
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- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン
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ハードSFは興味があるくせになかなか読み進むのに苦労するのだけれど、audiobook.jp(旧FeBe)のおかげで3部作を読了(聴了?)できた。
1巻めは次々と発掘された異星人(?)の遺体や宇宙船の遺物から、研究者たちが謎を解き明かしていく話で、正直シリーズ中で一番面白かった。地道な調査と時には大胆な予測とで、少しずつ謎が解かれてはまた新たな謎が出てくるの一進一退さが好き。最初主人公のハントと真っ向対立する、意固地で偏屈そうに見える生物学者のダンチェッカーが、強力なパートナーになっていくのも気持ちいい。最後はダンチェカーによる「星を継いだ人々」についての感動の大演説がある。ガニメデで発見された宇宙船については謎のままだけれども、それは2巻のお楽しみ。
1巻では国家間の戦争を克服し、世界規模で宇宙開発に乗り出した未来の人類が主人公だ。楽観的過ぎる未来予想に頰が緩むものの、研究対象となっているルナリアンは南北の大国同士の激しい戦争が滅亡のきっかけとわかり、逆に米ソ対立冷戦真っ只中だった本作の時代背景を感じてしまった。ほんの40年前までは、ルナリアンの運命が人類に現実に起こり得る恐怖となっていたのだ。
2巻目ではなんと異星人ガニメアンとのファーストコンタクトがある。これも丁寧な交流っぷりがほほえましくて楽しい。だけど戦争という概念が全くないというガニメアンに大きな矛盾を感じてしまってなんだか落ち着かなかった。争いの概念がないのに恒星間移動まで達成するほどの文明を発達させるなんて不可能だと思ってしまう。ガニメアン宇宙船のAIが地球人を気が狂ってると挑発するシーンがある。争いを知らない人種ならそんな設計をしないだろうと思っていたが、のちにガニメアンが「我々は争わない。たまに争いを好む者がいると、それは気が狂っているとされて治療の対象になる」(セリフがこうだったかは自信がない)と明かすシーンがあって、これに裏の意味を持たせる意図がないことそのものにホラーに感じた。「気が狂っている」という表現そのものを回避するという解決策を取る前の人類が書いた小説の、これが限度なのかもしれない。将来人類が本当に争いを克服したら、一体どんな姿になっているだろう。
3巻目は宇宙戦争ものになってしまってなんだか安っぽくなる。とはいえAI同士の擬似戦争ともいえるものなので、本当に未来の戦争の形なのかもしれない。敵がデスラーみたいなわかりやすさで、なんとまあコミカルになってしまったことと思ったw ここでも戦争を知らないお人好しのガニメアンがガミラス(違う)に何万年も騙され続けていたというのが、ありえなさすぎるので落ち着かない。
ネタバレになるが、人類が非科学的なもの(宗教含む)に惑わされ続けて科学の発展が遅れたのは、実は異星人のせいだった!って展開は、昔の漫画の「科学の力で解決しよう」みたいな古さと稚拙さを感じてしまって、宇宙戦争の展開そのものよりもがっかり感を持ってしまった。非科学的なものを一様にマイナス要因と見なすのには大きな抵抗を感じるのだ。1巻ではほとんど時代を感じなかっただけに、どんどん時代を逆行するようで勝手に残念がっている。
しかし3巻まで読んで良かった。わたしは大団円がないと落ち着かないので、きちんと全部に決着がついて新たな希望が見えるところで終わってくれたのには救われた。
個人的に好きなところは、新たな異星人による取り調べのようなファーストコンタクトに憤慨するダンチェッカーがかわいくて良い。
これだけの長さのハードSFをなんとか読破(聴破)できたのも、寝落ちしない限りしっかり言葉を耳に届けてくれるオーディオブックのおかげだ。今まで全く想定していなかったが、わたしは耳からの情報のほうが受け入れやすいのかもしれない。